さて今回は樹脂を硬化させるお話です。
塗料や接着剤の基本になる「樹脂」にはいろいろな種類があるということは以前このブログの中でご紹介させていただきました。
有機化成品の中でも塗料や接着剤はまずゆるゆるのゲル状のものが熱、硬化剤、光などの刺激を受けて固化する化学反応を伴う材料です。
エポキシ、アクリル、ウレタン、フッ素、シリコン…等々。
それぞれの樹脂には特長があり、その性質によって用途を使い分ける、というようなことをお話しましたね。
今回はそれらをどう固めるか、あるいはどうやったら固められるかについてです。
それぞれの樹脂のもつ特性によって硬化方法が決まります。
したがって塗装・接着などの生産工程を組むうえで硬化方法をあらかじめよく理解し、検証しておくことは極めて重要です。
① 熱硬化樹脂
強制的に熱を与えることで硬化する樹脂です。
アクリル、エポキシ、シリコン、フッ素、ポリエステル、メラミンなどが熱硬化樹脂の代表選手です。
硬化温度は樹脂のよって様々ですが、一般に60~400℃程度の加温が必要です。
この温度条件をしっかり検証し見極めることは大変重要です。
温度と時間によって硬化条件が決定します。
トンネル型の生産ライン一体型の連続硬化炉を選択するか、金庫型のバッチ炉を選択するか、が決まります。
これに実際の製品の生産量などを加味して、最終的に具体的な生産ラインが設計されます。
② 硬化剤・触媒などとの反応硬化樹脂
ウレタンであればイソシアネート、エポキシであればアミンなどの硬化剤・触媒を生産現場で配合してそれらの化学反応によって硬化するタイプの樹脂です。
上記のアクリルやシリコンなどの熱硬化型の樹脂でもウレタンなどと変性させることで反応硬化型にすることもできます。
また、硬化剤さえ混ぜてしまえば自然に固化していきますので、いつまでに固まってしまうのか(ポットライフといいます)を計算して塗料や接着剤の配合量を決める必要があります。
③ UV硬化樹脂
紫外線によって反応し硬化する樹脂です。
これはアクリル樹脂を編成させたものが多いです。
樹脂に「光開始剤」と称する添加剤を入れ反応させることで、樹脂が紫外線と反応して硬化するメカニズムです。
硬化条件も数秒単位で固化する超速硬化で、塗膜の硬さも高い硬度が確保できます。
床のフローリング材などはこのUV塗料が塗られているケースがほとんどです。
ただし生産ラインにはUV照射装置が必須となります。
紫外線は皮膚がんの原因になるなど極めて危険な波長の光です。
作業者が暴露しないように安全対策も極めて重要です。
④ 可視光硬化型樹脂
先ほどお話したように紫外線は人体に有害な光です。
そこで自然光で硬化するタイプの樹脂です。
硬化原理はUV硬化型樹脂とほとんど変わりませんが、可視光のある波長の光に反応する「光開始剤」が添加されています。
元々は歯科医療の業界から開発が進んだもので、義歯の口内接着など使われ始めました。
これも可視光ですが、指定された波長域の光照射装置が必要になります。
⑤ 自然乾燥型樹脂
自然に放置しておくと硬化していく樹脂のことです。
典型はラッカー樹脂。
ホームセンターなどで市販されているスプレー式の塗料はすべてこのラッカー塗料です。
溶剤によって切断されていた樹脂が、塗装後に溶剤が揮発することで「手」をつなぎ合って硬化するという極めて単純なメカニズムの樹脂です。
しかし単純なだけに上記の各樹脂に比べると性能は劣っています。
そのためスマートフォンやデジタルカメラなど比較的デザインが重視される製品の外観加飾用に採用されるケースがほとんどです。
以上、繰り返しになりますが、樹脂の硬化メカニズムを理解していただくことは塗膜や接着層の性能を担保するだけではなく、合理的な生産ラインの設計にも必須なファクターとなります。
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