塗装に先立って、被塗物を塗装に適するように処理します。これを素地調整といい、非常に大切な工程であり、素地調整の方法は、被塗物の種類によって異なります。表5-1、表5-2、表5-3に主なものを示します。
5.1 木材の素地調整
手飽削り仕上げ、水性着色目止め、たんぽずり仕上げの三つによって発達してきた我国の木工塗装は最近まで木材の表面仕上げの技術が非常に軽視され、悪い素地を塗装によって美しくすることが、木工塗装の目的あるいは技術とされてきました。
このようなことから薄い塗膜で、物質の持味を生かした、平滑な塗面に仕上げる本格的な塗装技術は普及を見ませんでした。優秀な仕上りを求めるならば、それはただ単に完全に素地を調整することにあるといっても過言ではありません。なぜならば調整が完全に行われていれば、その後の塗装作業は極めて容易であり、円滑に運ばれます。
最近の木工塗装に多く見られるオイルフィニッシュなどによって代表される材面即塗面の考えからすれば、木工塗装品の増大と合理化と共にあいまって、素地調整はますます研究されなければなりません。
5.1.1 含水率の調整
木工品は、室内暖房や空気中の湿気の変化によって絶えず膨張、収縮を繰り返し、狂いが余儀なく起こります。寸法の狂いや、そりなどで使用上の支障をきたしたり、美観が著しく損なわれたりします。これらは、塗装によって多少はよくなりますが、完全解決は、含水率の管理にあります。木材の含水率の測定方法は、試料重量と試料全乾重量を測定し、これにより算出する方法と、木材の電気的性質を利用し間接的に測定する方法ありま す。一般にJIS では次のように定義されています。
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