脱脂
処理のうちで重要なのことは、この脱脂と脱錆です。脱脂は金属の表面に付着している油や汚れを取り去る作業で、この油には常温で液体のものと、常温で固体のものがありま
す。
油脂には動植物性の油のように、石鹸や苛性ソーダなどの薄い溶液で簡単に取れるものもありますが、 マシン油やグリースなどのように簡単に取れないものもあります。そこで脱脂するにあたっては、まずどんな油がついているのか、油脂や汚れの性質をよく見きわめることが大切で、そのうえで被塗物の状態に適した処理方法を選ぶことが大切です。こ
のうちでもっとも簡単なものは、布による拭き取り、または、はけ洗い法でがき砂などをブラシにつけて洗う方法と、ガソリンや塗料用シンナーなどを布につけて拭き取る方法があります。
また、カラ焼き法といって、加熱炉または直火(300~400 °C)で素材についている油脂分を焼き、冷却後ブラシ等で炭化したものを取り去る方法があり、鋳物製品などの処理に用いられています。
しかし、現在は生産性の向上と作業の合理化をはかる目的から、これらの方法はほとんど行われず、その主体は化学的処理方法に変わっています。
化学的な処理方法
化学的な処理というのは、溶剤や薬品で油や汚れを浸漬あるいはスプレーによって溶解 除去しようとするもので、この処理で注意することは、素材がどんな金属でできているか
ということです。
例えば、アルミニウム、亜鉛、黄銅などの金属であればアルカリに侵されるので、アルカリ洗浄はできませんし、また、金属によってはアルカリには強いが酸に侵されるものも
あり、被塗物の素材である金属の種類に応じて、それぞれにふさわしい処理液と処理方法を考えなければなりません。
次に考えなければならないことは、被塗物が一つの金属からできているか、二種類以上のものが組み合わされてできているかということです。これらの種類や汚れの種類によっ
て処理剤の適用性が異なってきます。
1.鉱物性の油
これは加工時についた機械油などが一般的で、これらの鉱物油は、ケン化(一般にエステル類が加水分解を受けて、その成分の酸とアルコールに分かれる反応) しにくいので取
れにくくなります。
2.動植物の油
これらの大半は脂肪酸とグリセリンのエステルで、苛性アルカリによって脂肪酸とグリセリンに分解されます。分解された両者はいずれも水に溶けるので比較的取れやすくなり
ます。
3.その他の汚れ
ホコリやペイントマークなどや、温気、研磨に使用したワックス類などがあげられます。
そのほか、化学薬品の種類によっては、有機溶剤による火災や溶剤ガスの吸引による人体に及ぼす危険性、またアルカリ洗浄による肌荒れなど皮膚に及ぼす障害や廃水処理の問題があります。経済面で洗浄効果がよくても割高では使えないし、また洗浄時間のかかり過ぎなどの問題もあるので、洗浄については充分に考えたうえで適切なものを選ぶようにすることが肝要です。
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